昨日、エニグモのCo-CEOである田中氏が辞任を発表しました。

エニグモは2011年7月2012年7月にIPOしてから、まだ6ヶ月と経っていません。
目論見書には以下のような記述があります。
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http://www.enigmo.co.jp/wp-content/uploads/2012/07/ir_shinki.pdf (目論見書PDF)
(7) 特定人物への依存について
 (略)代表取締役須田将啓並びに代表取締役田中禎人は、当社事業に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定など、当社の事業活動全般において、きわめて重要な役割を果たしております。当社では過度に両氏に依存しないよう、経営幹部役職員の拡充、育成及び権限委譲による分業体制の構築などにより、経営組織の強化に取り組んでおりますが、何らかの理由により両氏による業務遂行が困難となった場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
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上場から6ヶ月の間で早くも、田中Co-CEOが抜けても問題ないレベルの「経営幹部役職員の拡充、育成及び権限委譲による分業体制の構築などによる、経営組織の強化」が完成したのでしょうか。
少なくともIRされるレベルでの人事異動は発表されていません。


「新たに海外で起業したい」という理由で退任されるのであれば、当然「特定人物への依存」が解消されたのか否かについて説明すべきと思いますが、残念ながら田中氏のコメントにもエニグモのIRにも記述はありません。
http://www.enigmo.co.jp/press/news/2013/20130121.html


また、上記コメントには
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「起業時から…考えていましたが、そのタイミングを数年前に具体的に決めました。上場を果たし、英語圏進出への第一歩まで達成できたら自分はエニグモを離れ、また一からアメリカで起業する」
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と書かれています。


IPOからわずか6ヶ月で退任を発表する可能性があったにもかかわらず(=経営上のリスクが短期間に現実となることが代表者自身として認識しえた)そのことを一切記載せずに上場したことは、証券取引法上の虚偽記載にあたる可能性すら考えられるのではないでしょうか。

起業には当然元手がいるわけで、時価13億あまりの田中氏保有のエニグモ株式(うち3.5億は上場3ヶ月前に行使したストックオプション)についても、エニグモ社とは無関係となった田中氏の一存で市場に放出されることも考えられます。IPO後の投資家にとってはエライ話です。


当面の間、株価が1/21の水準より下落したら株主代表訴訟のリスクもあり得るでしょうし、本件がある種の反市場的行動とみなされる恐れもあります。
また、このような会社を上場させた主幹事や、東証マザーズという市場自体の信任も問われてくるかもしれません。


万やむを得ない事情であれば仕方有りませんが、
少なくとも今回のコメントを見る限り、辞任は田中氏本人の意志なのでしょう。

IPO前に代表権を返上して平取になっておくとか、目論見書の「特定人物依存」について自身を外して記載するとか
消極的にしろ開示するべきだったのではないでしょうか。







僕もアントレプレナーの端くれとして、田中さんの気持ちは理解できなくもありません。
エニグモの業績は伸びており、円安という逆風はありつつも CtoCマーケットの成長ポテンシャルはまだまだ高いです。今後の成長余力も相当に高いでしょう。
上場を一つの区切りとして考えたくなるのも理解できます。


ただ、この決断を起業家なりVCなりのコミュニティが「よし」としてはいけないと思うのです。

IPO後半年で辞任発表するCEOの転進を応援することは、投資家の期待値をその程度としか考えてないということでしょう。
共同代表だから一人抜けてもいいとか、成長してるからいいとかいう理屈ではありません。
辞めなければ、170%でなく250%の成長を得られるかもしれないわけです。
今後IPOした新興企業のCEOが、IPO直後に続々と退任するようになったら…
ベンチャーにとってのゴールを、上場にしてはいけないと思うのです。

市場から石もて追われ、反市の汚名を着せられたとしても、それでもなお海外での起業にチャレンジしたい。
そういう熱いスピリットを持ってきたからこそ、田中氏は一時期の逆境にもめげず、
エニグモをここまで発展させることができたのだと思います。

だけど今は、僕はそれを応援できません。