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先日「STAND BY ME ドラえもん」を子供と見てきました。
原作への愛が感じられる、良い映画でした。
http://doraemon-3d.com/

その後しばらくして、子供が「お父さん、会社って倒産させるとものすごい借金するんでしょ?」
と話してきて、ああドラえもんの影響は凄いな…と思った次第。

<以下、一部映画ネタバレを含みます>


実は、ドラえもんが未来から来た原因は、のび太の起業にあるんですよね。
(以下、コミックス版ドラえもんから引用)
001-03


就職できなくて自分で会社を立ち上げたものの、社長室で花火をして会社が全焼。
会社は倒産し、その負債がのび太の「ひ孫」の代まで返済が続くため、野比家は窮乏。
耐えかねたひ孫の息子のセワシが、過去を変えるべくドラえもんを送り込む…
というプロローグ。

そら、こんなものを映画やマンガで見せられたら子供心にも
「起業は怖い」というイメージがついてしまうのは仕方ないわけで。

日本のアントレプレナーシップを育むためには、2112年の未来でドラえもんから
タイムマシンを借り受け、若き日の藤子・F・不二雄のもとへ行き
「日本のためなんです!書き換えてください!」と頼み込んで
違うプロローグを書いてもらうことが、もしかすると本当に必要なのでは?と
思うのであります。






…ただ、このプロローグ、実はひとつも間違ったことを言っていません。
子供向けマンガのご都合主義的なフリとして片付けられない、恐ろしいまでのリアリティが
ある話です。

プロローグ、2コマ目。
001-04

「就職できなくて、自分で会社を始める」
とありますが、このコマを見るとどうみても起業は大成功しています。
現実でも、特に若手の起業家はいわゆる就職活動のレールからドロップアウトした人が多い。
のび太もやはり、非凡な才能を秘めていたのですね。


そして5年後、のび太は会社を自分の不注意で、花火で全焼させてしまいます。
001-05

後ろの社屋は相当に大きな建物。わずか5年でさらに急激な成長を遂げています。
社長室で花火をやってしまうエキセントリックな性格はともかく、経営者として相当に有能だったことは
間違いありません。
いや、そのくらいエキセントリックだからこそ、ここまでの成功が得られたのでしょう。


ただ、これだけ短期間に事業を急成長させるには、当然資金が必要です。
現在であればベンチャーキャピタルによる投資を受ける、という手段がありますが、
ドラえもんが描かれた1970年台前半では、世の中にVCは影も形もなく、
社歴の浅い会社は銀行も相手にしません。

おそらく、怪しげなノンバンクを相手にリスクを冒して大量の借り入れを行い、
相当なレバレッジをかけて急拡大していたものと推測されます。
時はオイルショック直後、銀行の預金利率が5%とかの時代です。おそらく借り入れ金利は
20%以上、もしかすると当時の上限である40%の金利を払っていたかもしれません。


さらに2年後、ボロアパートに住み、借金取りが押しかけてきています。
001-06

会社に致命的ダメージを与えたとされる会社全焼から倒産まで
2年間の猶予があったことになります。
のび太の性格からして、自身の資産を顧みず、個人保証で膨大な借り入れをして
社員の再就職や取引先への手当をしたいたことと思われます。

通常、会社の債務は倒産をすれば免責・消滅しますし、
個人保証をつけていても自己破産すれば膨大な負債が残るということはありません。

ですが、今回の破産事由の原因はのび太自身の重過失(社長室での花火)なので
免責されない可能性が高いわけです。
自己破産での免責が認められないと、生活に必要な最低限の収入は認められた上で
借金返済の道筋をつけていくことになります。

「子供や孫の代、何十年にもわたっての借金返済があるが、一応生活はできている」
というセワシの境遇を作るには、いま現在においてもこれ以外のシチュエーションが
思いつかないくらい、よく出来たプロローグです。

これが1970年台、会社法など影も形もなかった時代に書かれていたというのは
もはや超時代的預言書と言っても過言ではないかもしれません…